認知症を正しく知ろうvol.3〜認知症を支える社会編~

介護あれこれ


65歳以上の5人に1人が認知症になるという推計は、今からたった8年後、2025年の状況を予想したもの。これまでの数十年で大きく変化してきた認知症ケアのありかたは、これからの数年で、さらに大きな変化を迫られています。認知症とともに生きる社会をつくるために、どんな取り組みが行なわれているか、また私たちにできることは何なのかについて考えてみたいと思います。

認知症に関する社会の変化。昭和から平成、介護の姿が変わる

30年にわたる認知症の電話相談をまとめた統計によると、1982年(昭和57年)、認知症の人の家族構成で最も多いのは「3〜4世代」で、全体の45%。最も少ない家族構成は「単身」で全体の5%でした。

ところが、2011年度になると、最も多いのは「単身」で全体の3割近くを占めるまでに。次いで多いのは同率で「夫婦」と「親と独身の子」という結果になりました。そして30年前1位だった「3〜4世代」は、最下位になっていたのです。

30年で激変した、認知症の人を支える家族構成。電話で相談を寄せる人は困難な環境にいることが多いとはいえ、驚くべき変化ではないでしょうか。

家族内で負担を分け合いながら認知症ケアをしていた時代から、今は認知症を患いながらの一人暮らしや老老介護、独身の子が1人で認知症の親の面倒を見るというケースが急増しています。核家族化が進む社会では自然な流れともいえますが、そうすると新たに問題になるのが、世話をする家族にかかる介護負担の重さ。通常の介護と違い、徘徊や妄想などの症状(BPSD)にも対処しなければならない認知症ケアでは、ケアする人にかかる負担はただでさえ重くなります。核化した少人数の家族では担いきれない介護負担が、今大きな社会問題になっています。

(資料:公益社団法人認知症の人と家族の会東京支部「認知症てれほん相談・歩み続けて30年(1982年度〜2011年度)」より)

認知症ケア、これからの取り組み

2015年に厚生労働省が策定した「新オレンジプラン」では、認知症高齢者などにやさしい地域をつくるとして、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目指して、さまざまな戦略を立てて取り組んでいます。

主な内容としては、認知症への理解を深めるための取り組み、認知症の人の介護者への支援であったり、認知症の本人やその家族の視点を重視することなどが盛り込まれています。

現在このプランに沿って、多くの取り組みが進められていますが、そのなかからひとつ、「認知症カフェ」についてピックアップしてご紹介します。

認知症カフェとは、特に難しい定義があるわけではなく、認知症の人とその家族のための居場所づくりをしようという取り組みです。月に1回〜週に数回程度、一定の会場に集まって、お茶を飲んでおしゃべりをするような場を提供しています。地域に住んでいれば誰でも参加でき、費用も茶菓子代の数百円程度のところが大半です。

同じ悩みや不安を抱える人と関わることによって、表情が明るくなったり、笑顔が増えたといった声が聞かれます。また、認知症カフェには医師や看護士、ケアマネージャーなどの専門家も参加しているため、できるだけ早い時期に専門家との接点を持つことで、情報も得られサポートも受けやすくなるメリットも。当事者たちが孤立することを防ぎ、自然に地域社会とのつながりをつくる取り組みとして、とても有効に機能しています。

全国さまざまな地域で開催されていますので、興味のある方は、お住まいの地方自治体のホームページなどを参照してみてくださいね。

早期診断で認知症に対抗する

認知症のなかでも最も多いアルツハイマー型について、近年、進行過程の詳細がある程度分かってきました。原因物質を視覚化するイメージング技術の開発も進められ、アミロイドβを検出するPETの開発も成功。有効な治療薬の開発に向けて着実に歩みを進めている状況です。

とはいえ、今はまだ有効と太鼓判を押せる治療法はないというのが現実。この状況で私たちにできることは「早期診断」と「早期対応」しかありません。

たとえばアルツハイマー型なのか、レビー小体型なのか、認知症の病態を医師に評価してもらうことで、これからの展望を予測できます。発病がいつ頃か分かれば、目安として何年後にどんなステージにいるのかが推定可能。周囲を悩ませるBPSDも、いつ頃どんなものが始まるかが予想できれば、心構えもでき、早期に正しい対応をとることができます。そういった情報は介護家族にとって、命綱ともいえるとても重要な情報。知っておくことで、辛い思いを少しでも軽減できるかもしれません。

ただ診断を受けて認知症と確定しても、告知については少し配慮が必要です。認知症のステージにもよりますが、がんの告知などとは違い、本人に正確に告げてもよい結果に結びつくことは少ないもの。「認知症なんですよ」とはっきり告げて本人にショックを与えるより、「年をとっているから誰でも物忘れはするけれど、認知症にならないように少しお薬を飲みましょう」といった柔らかい言い方で、本人が安心できるように伝える方法もあることを覚えておきましょう。

みんなで認知症ケアする社会へ


核家族化が進む現代社会では、どうしても介護負担が1ヵ所に集中しがちです。その1ヵ所を受け持っていた人が何かの事情でいなくなると、今度は上の世代や下の世代に負担が移動します。そうなると老老介護やヤングケアラー(10代〜20代で祖父母の介護など家族のケアをしている人)問題に直結することに。

こうした行き詰まった状況を変えていくためには、介護問題は家族のもの、という固定概念から、みんなが自由になることが必要です。認知症ケアは個々の家族だけではとても対処できない問題。家族まかせにするのではなく、地域社会のみんなが少しずつ分け合って受け持ち、社会全体でケアするという意識が不可欠です。

助けてあげたいと思う気持ちはあるけれど、認知症の人にどう対応していいか分からないという人は、「認知症サポーター養成講座」を受けてみるのもオススメ。この講座を受けると、認知症サポーターの目印としてオレンジリングがもらえます。活動内容は、認知症を正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守ること。そして自分の住む地域社会で、できる範囲で手助けすればいいのです。

認知症サポーターキャラバン

みんなが認知症についての正しい知識を身につけ、この問題を人ごとではなく自分ごととして、実感を持って考えることができる。そんな世の中へと向かって取り組みが進んでいることや、自分たちも気軽に参加できることを、ぜひ知っていただければと思います。

【認知症を正しく知ろう】
vol.1〜基礎知識編~
vol.2〜コミュニケーション編~
vol.3〜認知症を支える社会編~

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