高齢者と住環境について考える

LIFE


近年、日本人の平均寿命は徐々に延びており、2016年のデータでは女性87.14歳、男性80.98歳と過去最高を更新しています。(※1)

(※1)厚生労働省「平成28年簡易生命表」3 平均寿命の国際比較

しかし日本では、平均寿命と健康寿命の差である、高齢者が「健康に何かしらの疾患をかかえ介護が必要となる期間」が世界から見るとまだまだ長いという現状があります。

長い人生をずっと元気に過ごすためには、健康寿命を延ばすことが必要。そのために心掛けたいことの1つとして、「転倒予防」が挙げられます。

若い人が転倒しても軽いけがで済むことが多いですが、高齢者にとっては要介護の状態につながってしまう可能性があり、大変危険です。

そして、意外にも自宅内での転倒が多く、高齢者における住環境は自立支援に大きく寄与するのではないかと筆者は考えています。

そこで今回は介護と住環境をテーマにご紹介していきたいと思います。

なぜ住環境整備が必要なのか


健康だった高齢者が介護を必要としたり、寝たきりになったりしてしまう原因の1つ、「転倒」。

昨日まで元気に過ごしていたのに、たった1度つまずいてしまっただけで骨折してしまい、その骨折が原因で寝たきりや要介護になってしまうというケースも往々にしてあります。

要介護者等について、介護が必要になった主な原因についてみると、「骨折・転倒」が12.2%で4位となっています。(※2)

1位 脳血管疾患(脳卒中) 17.2%
2位 認知症 16.4%
3位 高齢による衰弱 13.9%
4位 骨折・転倒 12.2%

(※2)内閣府「平成29年版高齢社会白書(全体版)」3 高齢者の健康・福祉(図1-2-3-8)

このような転倒事故は屋外で多いようなイメージがありますが、なんと自宅内でも数多く起こっています。

2010年の調査によると、屋外で「この1年間に転んだことがある」と回答した人は9.1%であったのに対して、自宅内では9.5%。

若干ではありますが、自宅内の方が転倒事故の割合が高くなっているのです。

なんとなく家の中は安全だと思いがちですが、実は危険が多く潜んでいることがわかりますよね。

長い時間を過ごす場所だからこそ、しっかりと対策をする必要があります。

高齢者の転倒と住環境

次に高齢者の転倒の原因を探り住環境がもたらす影響を見ていきます。

高齢者の転倒の要因として、「内的要因」と「外的要因」の大きく2つに分類することができます。

内的要因

内的要因には、身体的特徴に関連する能力または疾病・疾患、薬剤などがあります。

  1. 認知障害による注意機能低下
  2. 白内障などによる視力低下
  3. 足の裏などの感覚障害
  4. 太もも、お尻などの筋力低下
  5. バランス能力低下

外的要因

外的要因には、床や手すり、段差、部屋の明るさなどの環境に起因するものがあります。

  1. 絨毯やコードなど引っかかりやすいもの
  2. 玄関の上がり框、敷居などの段差
  3. 夜間の部屋の暗さ

これらの要因のうち、外的要因と内的要因の②④⑤は住環境を整えることで解消・カバーできそうですよね。

住環境を整えることで転倒を完璧に防ぐことができるわけではありませんが、要因の多くを減らすことができます。

これらのことから、住環境の整備が健康寿命の延伸につながるといえますね。

住環境を整える時のポイント

健康寿命を延ばすためには住環境を整えることが重要だということはわかってきましたが、実際どういうところを整えたら良いの?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、以下では住環境を整える際にチェックするポイントをご紹介していきます。

玄関


日本は高温多湿なため、建築基準法により床の高さを45cm以上の高さにするよう定められています。しかし、この段差が乗り越えられず転倒してしまうケースは多くあります。

この場合には、段差を緩和する玄関台や手すりを設置することで高齢者の負担は大きく変わります。

廊下

廊下はフラットで掴まるものがないことが大半です。歩行補助、立位保持のために手すりを設けましょう。

足元に自動点灯の照明もつけておくと、夜間にトイレへ行くときなどでも進路が常に見えやすく安心です。

階段

専用の滑り止めをつけると、階段を踏み外してしまうリスクを下げることができます。

また、左右に手すりを設置すると安全性が高まります。

リビングなど居住スペース

床に散らばった物はつまづきの原因となるため片付けましょう。

電化製品のコード類も足に引っかかると危険なので、壁に沿わせる・カーペットの下に通す等の対策が必要です。

カーペットを敷いている場合、ズレていたり端がめくれていたりすると転倒につながる恐れがあるため、カーペットの下にズレ防止シートを敷き、端はテープで固定するとよいでしょう。

また、テーブルや椅子、棚など、一見障害物に見えるものでも高齢者にとっては掴まる場所となっていることもあるので、普段の行動をよく観察することが大切です。

お風呂


浴室は非常に滑りやすいため、滑り止めマットや手すりの用意が転倒防止につながります。

また、浴室での転倒事故を防ぐために注意すべきことは、温度調整。

急に熱いお湯に浸かったり、お風呂から上がって寒い部屋に移動したりと急激な温度変化にさらされたとき、急激な血圧変化が起こり、体に負担がかかってしまいます(ヒートショック)。

体力が衰えてしまっている高齢者は特に影響を受けやすく、めまいや失神が起こった結果、転倒したり湯船で溺れたりしてしまうのです。

とても恐ろしいヒートショックですが、予防策として脱衣所に暖房器具を設置すると効果的。その他にも入浴前に浴室全体を温めておいたり、湯船の温度を熱くしすぎないようにしたりと、温度差を少なくするよう気を付けることが大切です。

このように住宅環境を整えるには、自分で出来るものから、リフォーム業者さんに依頼しなければ難しいものまで様々です。

また、現在は手すりなどがなくても問題ない方であっても、徐々に転倒等の危険性は高くなります。ご家族の方が注意深く見てあげて、そのときの状態に応じて必要な対策を取っていくことが非常に重要です。

まとめ


今回は高齢者の住環境についてご紹介してまいりました。

住環境の整備をするときのポイントをいくつかご紹介してきましたが、こちらはあくまでも最低限のポイント。一人ひとりにあわせてカスタマイズしていくことが必要です。

住環境を整えることは、健康寿命を延ばすだけでなくQOLの維持・向上にもつながり、心身ともに元気な生活を送ってもらうためには必要不可欠といえます。

高齢者の方はもちろん、一緒に暮らすご家族の方もご自宅の中に潜む危険な場所をチェックし、できるところから対策をしていきましょう。

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