介護におけるコミュニケーションの基本とコツ

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介護業務に携わっていると、業務に追われてなかなか会話に時間がとれなかったり、時にはうまく相手とコミュニケーションがとれなかったり、利用者さんとのコミュニケーションについて悩むことがありますよね。

今回は利用者さんと日頃からうまくコミュニケーションをとるために心がけておきたいコツをお伝えしていきます。

介護におけるコミュニケーションで大切なこと

介護におけるコミュニケーションで大切にするべきことは、言葉だけではなく、身体全体でコミュニケーションをとっていくという点です。

介護を受ける方のADL(日常生活動作)はそれぞれ異なり、中には口から発する言葉をうまく使えない方もいます。

顔の表情や動作、目の動き、手の動き、足の動きなどから相手の伝えたいことを感じ取り、こちらも相手に伝わる方法を考えた上でコミュニケーションをとっていきます。

時には言葉だけではなく、こちらの表情や動作で伝え返すこともあります。いかに相手からの表現を読み取り、相手に返すことができるかが重要になります。

コミュニケーションの目標は”円滑な業務の流れを作り上げ、利用者さんやその家族の信頼を得ること”

コミュニケーションをとることの大きな目標は、“円滑な業務の流れを作り上げること”です。コミュニケーションは、単なる世間話や時間稼ぎの対象ではありません。

また、利用者さんやその家族とコミュニケーションを続けることにより、目に見えない信頼関係が構築されていきます。

「この職員さんたちに任せておけば大丈夫」と、利用者さんや家族からの信頼を得ることにより、業務にもトラブルが減り、結果的に介護士としての立場と利用者さんとその家族、すべてを守ることにも繋がります。

コミュニケーションの3つの基本~聞き上手になるために~

介護職が、業務の中で意識しておきたいコミュニケーションには3つの基本があります。

介護職が一方的に喋り続けるコミュニケーションはあまり良いコミュニケーションの取り方とはいえません。会話の中で「話し上手」「聞き上手」という言葉を聞いたことはないでしょうか。

どちらも兼ねそろえていれば心強いですが、これからコミュニケーションを意識していく場合は、まずは「聞き上手」を意識してみましょう。

そのために、気をつけておきたいポイントを3つ解説していきます。

  1. 傾聴
  2. 共感
  3. 受容

「傾聴」について

介護職が利用者さんと会話をするにあたり、時には“相手の話を聞く”だけで会話が成立することがあります。それが「傾聴」です。

ただ黙って頷きながら相手の話を聞いてあげるだけでも、相手が心に留めている悩みを解消できることがあります。

介護の現場に限らず、「愚痴を言うだけでも気分がスッキリする!」という場面に出会ったことはありませんか?

きちんと「傾聴」するためには、ただ話を聞くだけではなく、相槌をうったりしながら”相手の話をきちんと聞いている”ということを表現する必要があります。

利用者さんも、相手が聞く姿勢でないと話そうとは思いませんから、しっかりと聞く姿勢は意識するようにしましょう。

そうすることで、利用者さんは「自分の話をしっかり聞いてくれているんだ、切実に向き合ってくれているんだ」と思うことができ、より介護士を信頼してくれるようになります。

「共感」について

「共感」とは、利用者さんと会話を続けていく中で、相手と同じ状況を想像し、嬉しかったことや辛かったことを同じように感じ取るという手法です。

相手と同じことを感じるためには想像力が大切です。その想像力を高めることにより、次に自分の発する言葉にも変化が現れるでしょう。

そして同じく、自分の表情や行動にも変化が現れます。利用者さんと同じように喜怒哀楽を表現し、利用者さんに同調することで、利用者さんは自分を受け入れてくれていることを実感することができます。

「受容」について

「受容」とは、利用者さんの現在の状況をありのままに受け止め、そこから新たに対応を考えていくという手法です。

時には、介護職から見ると理解しがたい行動を取る利用者さんもいます。

その場合でも、頭から利用者さんを否定したり、批判するのではなく、まずはありのままを受け止めることが大切になります。

利用者さんの理解しがたい行動や言動を、無理に止めるのではなく「何か理由があって行動しているんだ」という視点を意識することが重要です。

あると役立つ4つのコミュニケーション技術

コミュニケーションには様々な技術があります。ここからは介護の現場でも活用できる、4つの技術を紹介していきますので、日頃のコミュニケーションに役立ててもらえればと思います。

  1. 開かれた質問、閉じられた質問の理解
  2. ミラーリング
  3. マッチング
  4. バックトラッキング

2~4を総称して「ラポール法」と呼ぶことがあります。

開かれた質問、閉じられた質問の理解

開かれた質問は、相手が自由に回答できる質問の仕方を指します。「はい」「いいえ」で終わることのない広がりを期待できる質問です。

ただ、開かれた質問を行うだけでは、明確な意思疎通が図れないこともあります。閉じられた質問は「はい」「いいえ」や、短い回答の仕方で終わらせることのできる質問です。

閉じられた質問は、会話をすることが苦手な方や、言語障害などにより言葉を上手く出せない方などへの質問方法として適しています。

利用者さんの心身の状態や性格によって、開かれた質問・閉じられた質問を使い分けることがおすすめです。

ミラーリングについて

ミラーリングは、相手と同じ動作や姿勢を真似ることをいいます。ミラーリングは介護ではないビジネスや、日常の人間関係の構築などにも使われている手法ですが、介護現場にも活用することができます。

利用者さんと目線の高さを合わせ、その方が表情や動作を豊かに表現を行うなら、介護職員もできるだけ同じように、表情や動作を豊かにして、表現を返すなどがミラーリングにあたります。

日頃から、各利用者さんの表現の特徴を読み取り、自分のコミュニケーションにも活用してみましょう。

マッチングについて

マッチングとは、目に見えない部分で相手にいかに合わせることができるかというものです。

例えば声の速さ、声の大きさ、声のトーンなどです。

普段の介護現場の中で、時間に追われているせいで、自分のペースで相手とコミュニケーションを取ろうとしていないでしょうか?

例えば、話す速度がゆっくりの方に対して、答えを遮ってしまったり、早い口調で喋ったりすると、会話は成立しにくいです。

「どうにも会話のキャッチボールがうまくいかない……」なら、自分の話すスピードや声の大きさなどを、改めて意識してみましょう。

バックトラッキングについて

バックトラッキングとは、相手の発言した言葉を活用して、そのまま相手に返しながら会話を進めていくという方法です。いわゆる”オウム返し”というものですね。

相手に言葉を返しながら進めることで、「私はあなたの言葉をしっかりと聞いている」という意図を、相手に伝えることができます。

しかし、いつも同じ言葉を相手に返し続けると、「真剣に話を聞いているの!?」と、相手に不快感を与えることもありますので、時には同じ意味合いを持つ別の言葉に置き換えながら、工夫して会話をすすめていきましょう。

ミラーリング・マッチング・バックトラッキングはまとめて「ラポール法」とも言う

ミラーリング、マッチング、バックトラッキングは、まとめて「ラポール法」とも呼ばれます。ラポールはフランス語で「信頼関係」「親密な関係」などの意味合いを持っています。

介護現場でもすぐに活用できるため、自分のコミュニケーション方法に取り入れようとされている方が多いようです。

利用者の症状・性格別のコミュニケーションの取り方のコツ

相手が人間である以上、すべてに対応できるという手法は存在しませんが、利用者さんの症状や性格により、適しているであろう対応方法やコツは存在します。

ここではよくある利用者さんのパターンを3つ挙げ、それぞれのパターンで適したコミュニケーションのコツを紹介していきます。

  1. 怒りっぽい利用者さん
  2. 一方的に喋ってくる利用者さん
  3. 無口な利用者さん

1.怒りっぽい利用者さんとのコミュニケーション

怒りっぽい利用者さんとのコミュニケーションには、短い返答や「はい」「いいえ」で答えられる、閉じられた質問が有効です。

例えば、「ご飯は食べなければならない」「薬は飲まなくてはならない」などと、押し付けるような意味合いでコミュニケーションを取ろうとしても、相手を怒らせてしまうでしょう。

まずは閉じられた質問で様子を見ることから始め、相手がどのようなことで怒るのかを探していきましょう。

「今はいらない」と利用者さんに言われた時には素直に引き、少し時間を置いたり、職員を交代しながら対応してみましょう。

2.一方的に喋ってくる利用者さんとのコミュニケーション

一方的に喋ってくる利用者さんには、頷いたり相づちを打ったりしながら話を聞く、傾聴が有効です。

まずは根気よく傾聴を続けながら、喋っている内容(利用者さんが伝えたい内容)を聞き続けてみましょう。

認知症がある場合には、同じことを繰り返し喋る傾向にあります。かといって途中で話を遮ってしまうと、相手も不快に感じることがありますので、傾聴を続けながら話の途切れる瞬間を探してみましょう。

人は延々としゃべり続けることは難しく、時々できる”間”で話を切り上げることも必要です。

「その話はもう聞きましたよ」という遮りではなく、「そうなんですね! それでは今から私は頼まれている仕事がありますので行ってきてもよいですか?」と、相手に同意を得る形で話を切り上げるのもおすすめです。

3.無口な利用者さんとのコミュニケーション

介護職員側から何を伝えようとしても無口な利用者さんの場合、一定のリズムでの対応が有効です。

単なる性格だけではなく、新規で来所された利用者さんが、環境が変わったことにより混乱して、無口になってしまっている場合などがあります。

利用者さんが無言であるからといって、介護職員側も無言のままでは、いつまで経ってもコミュニケーションが取れません。

相手が無口な方でも、「おはようございます」「調子はどうですか?」など、基本的な声かけなどは忘れず、少しの笑顔を含ませながら、根気よく対応を続けてみましょう。利用者さんに職員の人柄が伝われば、例え無口でも、徐々に表情に変化が現れます。

「一度に気持ちを開かせてあげよう」と無理なコミュニケーションをはかると、お互いに疲れてしまいますので、ゆっくり根気よく対応していくことが大切です。

介護サービスを提供している時のコミュニケーションの話題例

コミュニケーションは、それぞれの場面で使い分けることが大切です。

あくまで1つの例ではありますが、介護サービスにより、どのような表情でどんな話題を持ちだすことがオススメなのかを紹介していきます。

  • レクリエーション中
  • 入浴介助中
  • 排せつ介助中

レクリエーション中のコミュニケーション

レクリエーションでは、多くの方と一緒に行動をおこないますので、個別の事情の話などは避けるようにしましょう。

利用者さんは、ADL(日常生活動作)がそれぞれ異なるため、「○○さんにはできても○○さんにはできない」という話題に触れると、できない人を傷つけてしまいます。

複数の方とのコミュニケーションを必要とする場合、「全員に共通していること」を話題にすることがおすすめです。

天気、気温、季節、食べ物など、周囲の環境の話をメインにもってくるとよいでしょう。

全体に聞こえるほどの声の大きさ・トーンを心掛け、サポートの職員には難聴の方の近くについてもらい、レクリエーション中のコミュニケーションをフォローしてもらいましょう。

入浴介助中のコミュニケーション

入浴介助では相手が裸になっている状態なので、身体に関する話題は避けるようにしましょう。パウチをつけている方もいれば、手術の大きな痕が残っている方もいますが、それについて触れられるのは不快な気分になってしまう方が多いです。

「昨夜はよく眠れましたか?」など、ちょっとした話題から話を広げていくとよいでしょう。

排せつ介助中のコミュニケーションの話題例

排せつ介助中は、排せつ介助を行われること自体を嫌と思っている方もいらっしゃるので、排せつに関する話題はできる限り避けるようにしましょう。

しかし、排便チェックなどの確認は、利用者さんが自分で申告できる場合には聞いておくほうが良いです。

「便がついている」「汚れている」などの羞恥心を煽るような発言は避け、必要以上に話しかけることは避けましょう。

介護サービス提供時のコミュニケーションの留意点

食事、排せつ、入浴などのタイミングでは、相手の状況を考えたコミュニケーションの取り方が大切です。

「コミュニケーションをとりたい!」とはりきりすぎて、必要以上に距離を縮めすぎたり、馴れ馴れしく話しかけたりすると、相手に不快を与えるだけではなく、信頼関係の低下にも繋がりますので気をつけておきたいポイントです。

コミュニケーション能力を飛躍的に向上させたい方は研修にいくことがオススメ


コミュニケーションについて、介護の職場で学ぶことももちろん大切ですが、コミュニケーション研修に参加することにより、飛躍的なスキルアップが期待できます。

相手が人である以上、完璧なコミュニケーション手法は存在しませんが、コミュニケーション研修を受けることにより自分自身の受け皿を広く整え、多くの事例に適した手法を提供できるようになるでしょう。

研修に必要な費用はおよそ20000円~30000円となっています。

コミュニケーション技術を身につけるとあらゆる場面で活用できる

コミュニケーションは、介護の現場に限らず、人が生活していく上で欠かせないものとなっています。

基本となる”言葉のやり取り”だけではなく、目で見えるやり取り、肌で感じるやり取りなど、コミュニケーションは”全身で行うもの”といってもいいくらいです。

介護においても、コミュニケーション能力を磨くことは大切であると言われており、相手に信頼されるためには、介護そのものの技術とコミュニケーションのスキル、両方を磨くしかありません。

コミュニケーションは、相手の心を気遣うだけでなく、不要なトラブルを避け、介護士としての自分の立場を守ることにも繋がります。

コミュニケーションの技術は、誰しもが習得することができます。

まずは「自分はコミュニケーションが苦手だ」という意識を取り除いた上で、1つ1つコミュニケーションの技術を得られるように挑戦してみましょう!

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