服薬介助のコツは、見守り、受け入れ、薬を知ること

使えるハウツー


高齢者にとって薬を飲むことは、健康をつなぐ命綱ですが、同時になかなか難しい大仕事でもあります。それは、高齢になると飲み込む力や薬の吸収・排泄能力が衰えてきて、薬にむせやすくなったり、副作用が出やすくなるから。

また、いくつもの持病を抱えていると、飲む薬の種類も増え、もの忘れが増えるお年寄りには管理が大変になることもあります。そのうえ認知症を患ったりしていると、薬を飲んだことを忘れてしまったり、飲むこと自体を拒否することさえ。

利用者がまちがいなく必要な薬を飲めるように手助けするのも、介護職の大切なサービスのひとつ。むせない飲ませ方、飲み間違いや薬の落下を防ぐポイントをしっかりおさえて、お年寄りがスムーズにお薬を飲めるよう、サポートしていきましょう。

薬の飲ませ方の基本

内服薬のポイント

錠剤・カプセル、粉・顆粒薬

大前提として、薬は水で飲むのが基本。お茶や果汁で薬を飲むと効果が減少したり、副作用が出たりすることがあります。

錠剤やカプセルを飲ませるときは、1つずつ舌の上に乗せましょう。

粉や顆粒剤の量が多いときや、飲み込む力が弱いときは、オブラートに包んで何回かに分ける、薬を滑らかにして飲み込みやすくする「服用ゼリー」を利用するなどの工夫を。

舌下剤

舌の下に錠剤を置きます。ゆっくりと唾液で溶かして吸収させる薬ですから、かみ砕いたり飲み込んだりしないように注意してください。

液体の薬

容器を静かに振って中身を均質にしてから、コップや吸い飲みで少しずつ飲んでもらいます。

外用薬のポイント

目薬

まず、目薬が雑菌に感染しないよう、スポイトの先端にまつ毛や皮膚を触れさせないように注意を。そして流れた液が口や耳に入らないように、ティッシュを用意しておきましょう。

利用者の頭を軽くささえ、下まぶたの下を軽くおさえると少しだけ粘膜が見えますから、そこを狙ってそっと目薬を落とします。液が流れ出ないように、すぐ目をつぶってもらいましょう。

坐薬

利用者に横向きに寝てもらい、坐薬の先端にワセリンなどを塗って滑りやすくしましょう。指の第二関節が隠れるくらいまで挿入したあと、薬が押し戻されないように、10秒ほどティッシュで肛門を押さえます。

服薬介助で注意すること

むせ、誤嚥をふせぐには

できるだけ体を起こして飲んでもらうようにしましょう。横たわっている場合は頭を持ち上げたり、横向きに姿勢を変えて。

あごが上がっていると薬や水が気管に入って、むせたり誤嚥(ごえん)しやすくなったりします。薬と水を口に含んだら、少し下を向いてから飲み込むように声をかけてください。

飲み間違いを防ぐ工夫

薬の取り違えの防止

本人の名前と袋に書かれた名前が一致していることを必ず確認して、別の人の薬と取り違えないようにしましょう。複数の利用者の介助をしていても、薬袋は1回に1人分だけ扱うようにすると、より確実です。

一包化して一目瞭然に

1回に飲む薬を一袋にまとめて、飲み間違いを防ぐ方法です。調剤薬局などでセットしてもらうと、利用者の名前や服用する時間帯が記載されて、よりわかりやすく。少し費用がかかりますので、利用者や家族に提案してみてください。

包装から取り出す手間も省け、高齢者がフィルム包装ごと飲んでしまう危険が避けられるのも利点です。

おくすりカレンダー、おくすりボックスで管理

おくすりカレンダーは透明なウォールポケットに、ボックスは仕切りごとに、飲む薬をひとまとめにして整理できます。「月曜日の朝食後」「火曜日の寝る前」など、飲むタイミングが一目でわかり、飲み忘れを防げます。

飲む薬がない時間帯には「薬なし」というカードを入れておくと安心です。

転がりやすい薬の落下を防ぐ工夫

介助中によくあるミスは、錠剤やカプセルを包装から出したときに床に落としてしまうこと。

少しフチが高くなっているお盆やバットにペーパータオルを敷き、その上で取り出すと、落としても転がり落ちにくくなります。

認知症の人の服薬介助のコツ

飲んだのに「まだ飲んでない」と主張するときには

認知症を患っている人が「まだ飲んでいない」と思い込んでいるなら、それが本人にとっての事実。否定すると、かえってかたくなになりますので、そのまま受け止めましょう。

対応法としては、医師と相談して水薬用の容器に本人に適した濃度の塩水やお茶などを入れ、液状の薬として飲んでもらう方法があります。ふだん飲んでいる茶葉とは色や味が違うものの方が受け入れてもらいやすいでしょう。

また、ラムネやサプリメントなど、錠剤に見た目が似ていて治療に影響のないものを飲んでもらう方法も。

飲むことを拒否されてしまったら

認知症になると「自分は病気ではない」という思い込みから、薬の服用を拒否することも。本人の気持ちをいったん受け止めてから、日ごろから本人が信頼している別のスタッフなどにバトンタッチ。話をしているうちに素直に従ってくれる場合もあります。

薬が多すぎて嫌がる場合には、家族や医師に報告しましょう。医師の判断で「どうしても必要な薬」だけに減らせることもあります。苦い薬が嫌だという場合は、糖衣錠やカプセル、小児用のシロップに変更できる場合も。

また「毒薬を飲まされる」と思い込み、家族や介護スタッフがいくら言っても服薬を拒否する利用者もいます。そういう場合は、利用者の薬によく似た形状の偽薬を用意し、スタッフもその場で一緒に飲むようにすると、毒が入っていないと安心して、飲むようになるケースもあります。

それでも拒否する場合には、どうしても必要な薬に限って、医師の判断や指示のもと食べ物に混ぜて服用させる場合も。いずれにせよ一人で対処するのではなく、医療職や他のスタッフ、家族と連携していくことが大切です。

見守りポイントは薬の知識から

薬は使い方を間違えれば毒にもなるもの。利用者が飲んでいる薬の作用と副作用、注意する点を頭に入れておくと利用者の変化に気づきやすく、事故の防止や、素早い対応につながります。

たとえば血圧を下げる薬は、副作用でめまいを起こすことがあります。歩くときにバランスを崩しやすいので、すぐに体を支えられるようにしておくことや、周囲につまずきやすいものがないようにしておくと安心です。

高血糖の薬の副作用では、血糖値が下がりすぎて意識障害を起こすことも。食事の量や表情を観察しながら声かけもして、受け答えに変わったところがないか、気をつけるようにしてください。

動脈硬化の薬は、血を固まりにくくして血流をよくします。その副作用で、ちょっとした切り傷でも出血が止まりにくくなることがありますので、利用者の近くでとがったものや硬いものを扱わない配慮も必要です。

ほかに、鎮痛剤でも胃腸障害を起こすことがあります。吐き気や食欲不振などが起こっていないか、様子を見つつ、こまめに声かけするようにしましょう。

服薬介助は介護職の腕の見せどころ


高齢者は薬の影響が出やすいうえに、1回に何種類もの薬を飲まなければならないことが多いもの。同じ薬をたくさん飲んでしまったり、必要な薬を飲み忘れてしまったりすると、大きなトラブルになることもあります。出される薬の種類や量に変化があったときは、特に気をつけて観察するようにしてください。

訪問介護でも施設利用でも、利用者を日ごろから見守っている介護職だからこそ、いつもと変わった様子にすぐに気づくことができるのです。少しでも気になる点があれば、医師や看護師、家族にこまめに報告や相談をするのも、質の高い介護サービスのための心得です。

「○○さんのおかげで飲み忘れがなくなった」「必ず名前と薬の確認をしてくれるから、安心して任せられる」と利用者や家族からの声が聞こえてきたら、こっそり小さくガッツポーズ。そして、あらためて気を引き締めてがんばっていきましょう。

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