高齢者のための口腔ケア~生涯元気に過ごすために~

使えるハウツー

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介護する人、される人・・・誰もが歳をとっても元気に、人生を前向きに楽しみたいと願っていると思います。その願いを叶えるには、お口の健康が欠かせないということが近年分かってきました。

高齢者にとってなぜ口腔ケアが大切なのか、また実際ケアを行なうときの注意点など、知っておきたい口腔ケアの基礎知識をご紹介します。

噛むことは老化と深い関係があった!?

脳の老化を防ぐ脳トレ、ご存知の人は多いと思いますが、実は「噛む」ことが脳トレになるって知っていましたか?

脳から身体に伸びている12対の神経のうち、11対は噛むことに関係しています。なんと1回噛むだけで、6000~9000の神経細胞が刺激を受けるのだそう。これに対し、たとえばイボイボのついたボールを握るような運動では、刺激される神経細胞はせいぜい数百程度。そうした運動をするよりも、噛んで食べるだけではるかに多い数の神経細胞を刺激することが分かっています。

また、噛むことによって伝わる刺激は、食べ物の熱さや冷たさ、固さや柔らかさなど、とてもバラエティに富んでいます。噛んで食べることは何にも勝る脳トレなんですね。実際に自分の歯で噛める人は噛めない人に比べて、認知症の発症率が低いという調査結果もあるんです。

また、噛むことで分泌されるホルモンも老化と関わりがあります。

幸せホルモンの別名でも有名なセロトニンですが、このホルモンは噛むことによっても分泌されることがわかってきました。セロトニンは体内時計を調節したり、安定した精神状態を保ったりと、私たちが人間らしく生活していくために実にさまざまな働きをしています。

さらに、噛むと唾液が出ますが、そこに含まれるホルモンにも動脈硬化を予防したり、弾力線維を増やして肌をきれいに保つ効果があることが分かっています。

見た目年齢も身体年齢も、若々しさを保つためにはきちんと噛むことが大切なんですね。

高齢になると口の中の環境はどう変化する?

年齢を重ねたお肌にシワやたるみが出てくるように、歳をとると歯ぐきにハリがなくなり、やせてきます。すると歯と歯の間に隙間ができ、歯垢や歯石が溜まりやすい状態に。若い頃と同じケアでは汚れが溜まりやすくなってくるんです。

さらに、唾液が減ることも問題です。唾液には殺菌作用があって、若い頃は放っておいても自浄作用が働いてお口の中を清潔にしてくれていました。ところが高齢になると硬いものを食べなくなったり、会話が減るなど、さまざまな理由で口の中が乾きやすくなります。すると自浄作用がはたらかず、お口の中が不潔になりがちになったり、飲み込みにくさや発音のしにくさ、不快感につながり、さらに硬いものを食べなくなったり会話が減るなど悪循環に。

また、高齢者には入れ歯を着けている人も多くいます。入れ歯も着けっぱなしや清掃が行き届いていないと、虫歯や歯周病などトラブルの原因になりがちです。
虫歯 飲み込みにくい 不快感 歯周病

お口の汚れが全身の病気を招く

口の中は細菌などの微生物が300種類ほどもいると言われていますが、そのほとんどは病原性ではなく、バランスが保たれていれば病気になることもありません。でも口の中が不潔になると、悪さをする病原菌が増え、知らない間にさまざまな病気をひきおこす原因に。

たとえばお口の中の汚れが原因で起こる歯周病は、30代から急に増え、69歳までの国民の約8割がかかっているといわれています。まさに国民病ともいえる病ですが、その原因菌や毒素は歯だけでなく、血流にのって体全体に広がります。その結果、糖尿病や動脈硬化を進行させるなど、深刻な病気につながったり、体全体に悪い影響をあたえるということが分かっています。

また、高齢になるほど気をつけたいのが誤嚥性肺炎です。誤嚥とは、本来食道へ入るはずの食べ物や唾液などが、誤って気管に入ること。そのとき口の中が汚れていると、肺で炎症を起こして肺炎になりやすいのです。高齢者の死因にとても多い肺炎ですが、そのうち誤嚥によるものがかなりあるといわれています。
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口腔ケアは高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上に役立つ

近年口腔ケアによって、先に挙げた高齢者のさまざまな問題を改善できることが分かってきました。

まず口腔ケアは、口の中をきれいにして虫歯や歯周病を防ぐだけでなく、唾液の分泌を促す効果もあります。唾液で潤うことで自浄作用がはたらいて、口の中の細菌数を減らす効果が期待できます。また口の不快感が減り、食事や会話もしやすくなりますよね。

さらに誤嚥性肺炎についても、口の中が清潔で細菌が少なければ、飲み込んでしまっても肺炎になりにくいだけでなく、口腔ケアの刺激で嚥下機能が改善され、誤嚥自体を防ぐことにも役立つのだそう。

生きる喜びを感じながら、充実した日々を過ごすには、おいしく食べ、人と楽しく関わることが欠かせません。口腔ケアをしっかりしてお口の中を清潔にすることで、さまざまな病気を防ぎ、食事やコミュニケーションも楽しめるようになるんです。

高齢者のための口腔ケア 実践編

高齢者の口腔ケアは、元気な方であればセルフケアでしてもらい、必要に応じて家族や介護者が補います。要介護度が高くなるにつれて介護者によるケアの部分が大きくなっていきます。
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  1. 1)歯ブラシでしっかり磨く
    まずは歯ブラシを使って食べかすなどの汚れをしっかりと落とします。力を入れすぎず、小さくマッサージをするようにするのがコツ。強くこすってしまうと歯ぐきを傷つけたり、歯が削れてしまいます。
  2. 2)歯間ブラシやフロスなど補助用具を使って磨き残しをなくす
    歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間などは、歯間ブラシやデンタルフロスを使って、隅々まで掃除します。また1日1回朝に舌クリーナーなどで舌表面をきれいにすると、唾液中の細菌の数を減らすことに効果的です。
  3. 3)入れ歯のお手入れ
    総入れ歯や部分入れ歯のお手入れが行き届いていないと、口腔細菌の温床になって口内炎や口臭の原因に。ひどくなると誤嚥性肺炎にもつながりかねません。1日1回はきれいに洗って清潔に保つようにしましょう。また寝るときには外すようにします。
  4. 4)口腔ケアのタイミング
    昼間起きている時は、会話やお茶を飲むなどで自浄作用がはたらいていますが、寝ている間はそれがありません。長時間、細菌が繁殖しやすい温かくて湿った環境になるので、1日1回、寝る前は特にしっかりとお口のお掃除をすることが効果的です。
  5. 5)口腔ケアの注意点
    まずはケアをする人が手洗いをすること。そして、ケアを受ける人に声かけをしながら、これからすることを説明します。ケアを受ける人の気持ちが元気になるように、明るく優しく声かけをしてみましょう。上体を起こして体勢を整え、その人のできること、できないことに合わせて歯磨きを介助します。なるべく介助は最小限にとどめて、その人ができることまでしてしまわないようにしましょう。そして終わったら鏡を見せて、きれいになったことを確認してもらうといいですね。

生涯元気に過ごすために、口腔ケアは欠かせないもの

歳をとってもおいしく食べて、周りの人と関わりながら楽しく元気に過ごしたい。そのためには日頃から、口腔ケアにきちんと取り組むことが欠かせません。

お口のケアは高齢者にとって、健康の土台をつくる大切なケア。その土台があってこそ幸せに生きていけるということを感じながら、ケアする人もされる人も前向きに取り組んでいけるといいですね。
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参考文献:
歯と脳の最新科学(堀 准一 著)
介護に役立つ口腔ケアの基本(財団法人 サンスター歯科保険振興財団 編集)

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