認知症の方のアセスメント。外せない3つの視点とは

使えるハウツー

アセスメントを行うケアマネジャー
介護サービスの利用者様のなかには、自分の思いをうまく伝えることができない認知症の方も多くいらっしゃいます。その場合、本人からの聞き取りで正確にアセスメントを行うのは難しいかもしれません。今回は、そんなときに手がかりにしてほしいチェックポイントや、忘れてはいけない視点についてお伝えします。

かゆいところに行き届くケアのためには、ケアマネジャーの的確なアセスメントが欠かせません。その結果を反映したケアをスタッフみんなが統一して行うことで、認知症のBPSD(周辺症状)が劇的に改善することもあります。責任は重大ですが、その分大きなやりがいも感じられるプロセスですので、ぜひスキルを磨いていってくださいね。

認知症の方のアセスメント、基本の視点

指差しする女性
認知症高齢者の方のアセスメントを行う際、基本となる視点を3つご紹介していきます。

現在のステージを確認し、今後の見通しを立てる

認知症は進行していく病気ですので、現在どのステージにあるのかを把握し、今後の見通しを立てることが大切です。家族にとっても、今の状態とこれからの見通しが分かることは、不安の解消につながります。進行度によって大まかに3段階のステージに分けることができます。

(1)軽度:軽度の見当識障害や記憶障害
少し前のことを忘れてしまう、道に迷う、言葉に詰まるなど。入浴や着替え、食事など身の回りのことは自分でできている。

(2)中等度:顕著な記憶障害や判断力の低下、BPSD(周辺症状)が表れやすい
よく知っているはずのものが何なのか分からない、家族が誰か分からない。暴言や妄想などのBPSDがある。入浴や着替え、食事などが自立してできない。

(3)重度:生活全般に介助が必要
運動機能が低下し、寝たきりに近い状態になる。発語がほとんどない、周囲に関心を示さないなど。
必要な質問を効率よく行って、どのステージにあるのかを評価していきましょう。評価ができたら、なるべく進行を遅らせつつ、滞りなく生活できるよう、ステージに合った関わり方や支援策、介護サービスを考えていきます。

身体症状を評価する

認知症の影にかくれて見逃されがちな、低栄養やサルコペニア(全身の筋力低下)、嚥下障害などがないか注意することも必要です。食事の様子や歩行の状態、転倒歴などを確認しておきましょう。

生活史を知り、信頼関係を築く

認知症ケアで問題になるのが、BPSD(周辺症状)とよばれるもの。暴言やモノ盗られ妄想、帰宅願望などがあり、認知症介護を難しくする一因となっています。そうした症状の改善に役立つのが、その人が生きてきた背景=「生活史」を知ること。

たとえば、「昼間から風呂になんか入れるか」などと、入浴を拒否されるAさんの事例。この方は長年自宅で自営業を営んできました。「入浴中にお客様が来られるかもしれない」という不安が障害になっていると分かり、それを取り除いたことで入浴を受け入れていただけました。このように介護する側にとって、ケアで行き詰まったときやコミュニケーションをとるときの重要な糸口になるのが、生活史です。認知症の方のアセスメントでは、その点も意識して情報収集を行っていきましょう。

生活史を聞き取り、記録に残していくことは、介護職員にとって役立つだけではありません。本人にとっても昔を振り返ることで心が安定し、気持ちが前向きになる効果があります。家族にとっても、「こんな苦労があったのか」「楽しいこともあったな」という思いが心のケアになることも。何よりも、こうしたていねいな関わりは、ケアマネジャーと本人、家族との信頼関係を作ることに大いに役立ちます。

アセスメントの具体的なテクニック

アセスメントを行っている様子

確定診断を参考にしながら行う

まずは、事前に認知症の確定診断の有無を確認しておきましょう。認知症にはアルツハイマー型や血管障害型、レビー小体型などいくつかタイプがあり、それぞれに特徴があります。

たとえばアルツハイマー型はゆるやかなペースで進行しますが、血管障害型は良いとき・悪いときがまだらに表れながら進行していき、マヒを伴うことも多くあります。レビー小体型はリアルな幻視を見ることから始まり、日によって症状の変動が目立つのが特徴。こうした情報を頭に入れておくと、アセスメントの際に、どこに焦点を当てればよいかが明らかになり、効率よく聞き取りができます。

「気になる症状があるけれどもまだ専門医を受診していない」という場合は、なるべく早く専門医を受診したいところ。脳腫瘍が原因になっている場合など、手術などで治療できるタイプの認知症もあるからです。本人が受診を拒否する場合は、情報を提供し、安心して受診できるようにアドバイスをしましょう。

話し方に配慮する

認知症の方は新しいことを覚えるのは不得意ですが、快・不快の感受性は豊かです。アセスメントの後に良い感情が残るよう、まずは笑顔、うなずき、あいづちなどを意識してお話することが効果的です。

長くて複雑な文章は理解が難しいため、なるべく聞きたいことを簡潔に、短くまとめて話をしましょう。また、専門用語やカタカナ言葉なども使わないほうが、理解してもらいやすくなります。言葉だけで伝わりづらいときは、紙に字を書いたり、ジェスチャーでなら伝わることも。いろいろな方法を試してみましょう。

相手が黙っているときは、理解に時間がかかっていたり、どう答えようか考えている時間かもしれません。矢継ぎ早に質問するのではなく、相手のペースに合わせてゆっくり話をしていきましょう。

オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン

「どうですか?」「いかがですか?」など、相手が自由に答えられるような質問を、オープンクエスチョンといいます。自由に話していただけるメリットがある一方、コミュニケーション能力が低下した認知症の方には答えにくいことも。そんなときにはクローズドクエスチョン(閉じた質問)=イエスorノーで答えられる質問を中心に、お話を聞いていくとよいでしょう。

例:
「歩くとき、杖を使っていますか?」
「お薬を飲むのを忘れることがありますか?」

応用編として、いくつか選択肢を示して答えやすくする方法もあります。

例:
「右耳と左耳、どちらが聞こえやすいですか?それとも両方同じですか?」
「ふだんお料理はされるのですか?それともお弁当が多いですか?」

ただし、クローズドクエスチョンばかりでは、会話がこちらの想定以上に広がりません。相手の自由な考えを引き出せていない可能性があるので、相手の様子を見て話せそうであれば、「それはどんな?」とオープンクエスチョンも交え、話を広げていきましょう。

短い時間で聞く

軽度の認知症の方の場合、生活史をお聞きすると長くなることもあります。そんなときは相手の負担にも配慮して、15分程度を目安に区切り、数回に分けてお話をお聞きしましょう。聞き取ったことは記録に残し、「また次回、続きを聞かせてくださいね」と約束しておくとよいですよ。

アセスメントから始まる、適切な認知症ケア

笑顔のケアマネジャー
ケアマネジャーは、アセスメントで利用者様の情報を集め、そこから課題を分析してケアプランを作ります。利用者様が認知症であっても、その基本は変わりません。その方やご家族と信頼関係を築き、想いを引き出すことが、よいケアプランづくりの土台になります。

周囲の適切なサポートがあれば、認知症の進行は遅らせることが可能です。コツをおさえてアセスメントのスキルを磨き、多くの人を笑顔にしていってくださいね。

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