ヘルパーがやってはいけないことの断り方 生活援助編

使えるハウツー

訪問ヘルパー お断り

利用者さんから「やってはいけないこと」を頼まれ、断りきれずついついやってしまった。どう断れば納得してもらえるか分からなくて困っている・・・そんな経験をお持ちの訪問ヘルパーは多いのではないでしょうか。

「やってはいけないこと」を一度でもやってしまうと、他の訪問ヘルパーに迷惑がかかります。「ちがうヘルパーはやってくれたのに」と不信感を持たれたり、予定にはない仕事をすることになったりと、頭を抱えてしまう原因になります。

訪問ヘルパーのなかで「やっていいこと」と「やってはいけないこと」の違いが出てしまってはいけません。上手な断り方を知っておけば、あなたの仕事もやりやすくなるでしょう。

今回のコラムでは、生活援助で「やってはいけないこと」とその断り方を実際にあったケースをもとに解説します。前回の「身体介護編」もあわせて、トラブルにならない断り方の参考にしてくださいね。

>ヘルパーがやってはいけないことの断り方 身体介護編

生活援助で「やってはいけないこと」と上手な断り方

ご自身で家事ができない利用者さんのために、生活で必要なことを代わりに行う生活援助。調理、洗濯、掃除、買い物など、基本的な日常生活をお手伝いします。

しかし、家事にはこれと決まった形がないため、どこまでやっていいのかあいまいになってしまうことがあります。まずは、「やっていいこと」「やってはいけないこと」の一覧を見てみましょう。

生活援助の「やっていいこと」「やってはいけないこと」

「やっていいこと」 「やってはいけないこと」
・掃除
・洗濯
・調理
・食事の配膳、後片付け
・ベッドメイク
・衣類の整理、被服の修繕
・食料品の買い物
・生活必需品の買い物
 (トイレットペーパーなど)
【本人を直接援助するとはいえない行為】
・利用者以外が使用する場所以外の清掃
・利用者以外の洗濯、調理
・生活日用品以外の買い物
・車、車いすの点検、清掃
・来客の応接
・ペットの世話

【日常的な家事とはいえない行為】
・大掃除、家具の移動
・正月や節句などの季節特別料理の調理
・庭そうじ、草木の手入れ
・年賀状の作成

【ホームヘルパーが行うことが適切とはいえない行為】
・タバコ、お酒の購入
・金銭、財産管理
・公文書などの代理人行為

「やってはいけないこと」は大きく3種類に分類できます。

・本人を直接援助するとはいえない行為

・日常的な家事とはいえない行為

・訪問ヘルパーが行わなくても日常生活に支障がでないとされる行為

利用者さんから頼まれたときは、この3つのどれかに当てはまらないかを考えてみてください。

では、それぞれ実際にあったケースごとに上手な断り方を解説していきます。

本人を直接援助するとはいえない行為

CASE1.「家族の晩ごはんもつくってほしい」

訪問ヘルパーは介護保険によって派遣されているため、利用者さんの援助だけを担当します。ですから、ご家族のお部屋の掃除や、衣服の洗濯、来客の応接はできません。できないことの説明は、サービス開始時にケアマネジャーから利用者さんに説明がされていますが、ヘルパーからももう一度はっきりとお伝えしましょう。

断り方の例:「介護保険で来ているため、ご本人様のことしか手伝えません」
やさしく、はっきりとした断り方がポイントです。もし訪問ヘルパーが帰ったあとに、作った料理をご家族が食べていたことがわかったら、「ごめんなさいね、ご本人様の分しか作れないので、次からは量を減らさせてもらいますね」とやさしく注意をしましょう。

CASE2.「ペットの世話をしてほしい」

ペットの世話もご本人様の援助とはいえないため、できません。動物が好きな方なら後ろ髪を引かれる思いでしょうが、ペットのお世話はできないとはっきりと伝えましょう。

断り方の例:「ご本人様のお手伝いしかできません」
ただ、ヘルパー自らの手で世話はできませんが、利用者さんが世話をされているのを補助するのであればOKです。「そろそろエサの時間ではないですか?」「お水欲しがっていますよ」と、利用者さんが気づかないところを補ってあげれば、ペットを通してコミュニケーションを取るチャンスにもなります。

日常的な家事とはいえない行為

ホームヘルパー 家事 洗濯物干し

CASE3.「おせちをつくってほしい」

おせちなどの手がかかる料理は作れません。訪問ヘルパーは決められたスケジュールのなかで動いているため、時間がかかり、予定を大きく乱されそうな料理は作れないことになっています。

断り方の例:「時間がないので、簡単なものしか作れません」
1時間の予定で入っているとして、調理にかけられる時間は長くても3~40分。ご家庭のガスコンロの数や電子レンジの有無によって、調理にかかる時間が変動するため、必要な時間の目安を立てて動きましょう。どうしても、と言われる利用者さんには「延長になりますがよろしいですか?」と聞けば、「それならいいわ」と納得してくださる場合が多いです。

CASE4.「クーラーの掃除をしてほしい」

窓掃除や庭掃除など、一年間で数回しか行う必要のない掃除はできません。クーラーの掃除も毎日行わなくてもいいことですが、実はフィルターの掃除くらいなら行えます。しかし時間は限られていますので、注意しながら動きましょう。

断り方の例:「本日は床を拭く代わりに、クーラーの掃除をしますね」
交換条件を提示して、利用者さんに従いましょう。クーラーの掃除をするときには、自分の安全を第一に考えてください。クーラーは高いところにあることが多いため、安定した足場が見つからないときはお断りしましょう。ケガをしてしまっては利用者さんの迷惑にもなるため、“もしも”のことを考えた行動をしてください。

訪問ヘルパーが行わなくても日常生活に支障がでないとされる行為

介護スタッフ 配膳

CASE5.「タバコを買ってきてほしい」

タバコやお酒などの嗜好品は、「生活を送るための必需品」とはいえないため購入できません。これらはからだに有害な面もあるので、利用者さんの健康のためにもお断りするようにしましょう。

断り方の例:「お医者様から止められているので、私では買いにいけません」
お医者様の名前を出せば説得力が増します。訪問ヘルパーが説得をするよりも、お医者様に止められていると伝えたほうが、利用者さんも納得しやすいです。

CASE6.「次に来るときに、足りないものを買ってから来てほしい」

事前に食材や生活必需品を購入してから、利用者さんのご自宅に訪問することはできません。利用者さんのご自宅についてからが、訪問介護のスタートです。

断り方の例:「お金の貸し借りは、間違いの元なのでできません」
利用者さんのご自宅から買い物に向かうときでも、受け取った金額をメモしておき、使った金額、お釣りをメモに控えておく。クレジットカード、ICカード等は使わず現金で買い物をする。もしも、利用者さんがレシートを捨てていれば、ゴミ箱から拾っておくことで、あとで役立つこともあります。お金のことに関しては、シビアに細かくチェックをしていきましょう。

CASE7.「遠いスーパーの方が魚が新鮮で美味しいから、そっちに行ってほしい」

利用者さんも昔はご自身で買い物や家事をしていました。その時の記憶で買い物をする店を指定されることがありますが、訪問ヘルパーができるのは生活をするうえで必要最低限のことだけ。そのため遠いスーパーに足を延ばすことはできません。

断り方の例:「時間がかかりますので、延長になってしまいますがよろしいですか?」
延長になってしまうと伝えると、納得されるケースが多いです。近いスーパーしか行けないなかで、少し工夫するポイントもあわせてご紹介します。「このメーカーのものを買ってきてほしい」と具体的な提案をされたときなどは「なければ、どうしますか?」と聞いてください。代替品の提案や、「なかったら買わなくてもいいですか?」と前もって聞いておけば、利用者さんも納得しやすくなります。

番外編:よくある利用者からの要求と答え方

Other1.「口に合わない、食べたくない」

せっかく調理をしても、利用者さんが食べたくないと首を横に振ってしまうことがあります。食事はからだの資本です。少しだけでもいいから食べてもらうための声かけをしましょう。

答え方の例:「一口だけ味見してくれませんか?」
ほんの少しでも食べてもらえればその後も食べ進めてくれたり、「塩を入れてほしい」など要望されたりします。「もっと濃い味がいい」と言われても、利用者さんによってはお医者様から塩分を控えるように言われています。その場合は出汁をしっかりめにきかせたり、土しょうがを入れたりと、少しの塩分で済むように工夫をしましょう。

Other2.「いつもお世話になっているからお礼の品を受け取ってほしい」

利用者さんからの感謝は、訪問ヘルパーをやっていて良かったと思える瞬間です。お言葉だけならうれしいですが、お礼の品物を渡されると困ります。「受け取れません」とお断りをしても、「ほかの人には内緒にしておくから」といたちごっこになってしまうことも。

答え方の例:「事務所に報告をしないといけませんので、これをいただくと、他のスタッフが事情を伺いに来ますが、だいじょうぶですか?」
訪問ヘルパーは仕事が終わったあと、事務所へ連絡をするため内緒にしておくことはできません。報告をしておくことで、同じ家に行っているヘルパーにも注意が促せます。

線引きが難しい、だからこそヘルパー同士で情報共有

介護スタッフ カンファレンス 笑顔

「こんな言い方をしたら、利用者さんが喜んでくれた」「新しい料理を作ったら、美味しいと言ってもらえた」など、どんな些細なことでもよいのです。自分ひとりではなくて、業界全体でレベルアップをしていく必要があります。

身体介護はベッドからの起こし方や、おむつ交換のしかたなどマニュアル化することもできますが、生活援助のマニュアルはありません。

ご家庭によって家事のルールは違うため、ルール通りにしないと満足していただけないこともあります。各利用者さんが求めているサービスを提供するためにも、同じ家に行っているヘルパー同士のコミュニケーションが大切です。

2回にわたって、身体介護、外出援助、生活援助の「できないこと」と断り方を紹介してきましたが、いかがでしたか。

もちろん、ここで紹介しているお願いが全てではないでしょうし、何年訪問ヘルパーをやっていても思ってもいない頼みごとをされることがあるものです。

そんな時に、このコラムを思い出していただき、アイデアのきっかけになることができれば幸いです。

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