言葉ひとつで大きな違い。介護の声かけ、タブー集

使えるハウツー

利用者さんに声かけする介護スタッフ
「お風呂に入りませんか?」と「お風呂いくよ~」。伝えたいことは同じでも、言葉の選び方次第で印象がガラッと変わります。相手との信頼関係が欠かせない介護現場では、どんな言葉で相手に伝えるかがとても重要です。

困ったとき、ピンチのとき・・・上手な声かけはその場をスッとおさめられる力を持っています。逆に、不用意にタブーな言葉を使ってしまうと、トラブル発生率が一気にアップすることも。

言葉選びに気を使うことは、介護のスキルを磨くことに直結します。このコラムで、利用者さんに対して使ってはいけない言葉と、逆に積極的に使っていきたい言葉をチェックしていきましょう。

覚えておきたいタブーな声かけ

腕でバツをつくる女性
まず「指示(~してください)」「禁止(~してはダメ)」「強要」「詰問(どうして~したの)」「命令口調(~しなさい)」、これらはすべてタブーですので気を付けて。してほしいことは、「~してもらえますか?」と依頼のかたちで伝えるようにしましょう。

また、関係性にもよりますが、利用者さんは「さん」づけで呼ぶのが基本。「あーんして」などの幼児語、上から目線の「~してあげる」は不適切です。

また「臭い」「汚い」などの否定的な言葉もタブーと心得て。悪気はなくても、「うわ~汚い!きれいにしましょうね~」などと言われたら、だれでも傷つきますね。相手の心情に配慮しながら、ササッと終わらせるのがプロというものです。

そのほかに気を付けたいのは、相手の意思を尊重すること。残された機能も使わないと衰えてしまうので、できることはご自分でやっていただきます。自分で選ぶ、自分で決めることを尊重した声かけをしていきましょう。

NG例:「私がやりますから」→ OK例:「難しいところはお手伝いしますので、ご自分でやってみましょう」
NG例:「今日は寒いので、この服を着てください」→ OK例:「今日は寒いですが、どの服を着られますか?」

認知症の人に対してのタブー

認知症の人の場合、職員が相手の話を否定して、説得しようとするとうまくいきません。

たとえば、ご飯を食べてないという人に対して「さっき食べたでしょう」、仕事に行くという人に対して「もう仕事はとっくに辞めたでしょう」、家に帰るという人に対して「家はここですよ」、物を盗られたという人に対して「盗っていません、そんなもの最初からなかったですよ」などがそれに当たります。

力づくで行動を変えさせようとすると、相手も感情的になったり、暴力に訴えたりと危険です。

こんなときは、相手に合わせた声かけをしていきましょう。「今ご飯を作っていますから、もう少し待ってくださいね。その間にお茶でもいかがですか?」「今日は日曜日ですよ、○○さんは働き者ですね。休みの日くらいゆっくりしてくださいね」などと、いったん相手の話を受け入れるようにしましょう。

「家に帰る」という場合は、何かしら理由があるものです。「子供が帰ってくるから、ご飯の支度をしなくちゃ」というなら「さっき連絡が入って、今日はご飯は要らないそうですよ。もう少しゆっくりしてください」。盗られたという場合は、「あれならさっき、クリーニングに出したところです。勝手なことをしてごめんなさい」など。否定ではなく、相手に合わせていろいろと工夫してみましょう。

嘘はいけない?初期の認知症への対応は?

悩んでいる様子の女性
「でも、あからさまに嘘をつくなんて・・・」「もし嘘がばれたらどうしよう」と抵抗を感じる人もいるでしょう。認知症の初期の人、レビー小体型認知症やピック病など、物忘れが比較的軽い方の場合は、たまに嘘を見破られることもあります。そんなときは、「すみません、私が勘違いしていたみたいです」と謝ってしまえばOKです。

「嘘はいけないから」と相手の話を否定し続けると、利用者さんはひとときも安心できず、つらい毎日を過ごすことになります。相手もそうですが、職員側も疲れ切ってしまいストレスが募るばかり。「嘘」ではなく、「相手の世界とこちらの世界をつなげるスキル」と考えてみましょう。

認知症のごく初期で、ときどき記憶があやふやになるような場合、一番不安を感じているのは利用者さん本人です。つじつまのあわない言動を指摘したり、本人に向かって「認知症じゃないですか?」などと不安をあおるのはNG。相手が間違っていても指摘や否定をせず、困っていることがあったらフォローしながら、よく見守るようにしましょう。

認知症の人が落ち着く言葉

言葉のもつイメージの威力を利用すると、認知症の人を理屈ぬきでスッと納得させてくれることがあります。ぜひ活用してみてください。

●日曜日・・・仕事に行こうとする人に対して「今日は日曜日だから、仕事はお休みですよ」など。日曜日は休み、という概念が刷り込まれている。
●故障・・・繰り返し何かをしようとする人に対して「故障中」の貼り紙や、「停電なので使えないんです」など。それなら仕方ない、と納得感につながる。
●役所や病院などからの通達・・・「75歳以上は運転禁止、警視庁から通達」「○○病院の○○先生が処方した薬」など。できればパソコンなどで打ち出し活字にしておくと効果的。権威のあるものなので、したがいやすい。
●お久しぶりです、ご無沙汰しています・・・最初のあいさつで親しげに話しかけると、「知っている人だ、安心できる」という感情になる。

逆に「怪我」「入院」「警察」など、トラブルを思わせるような背景を持った言葉は、むやみに使わないようにしましょう。怪我は「ぶつけた」、入院は「旅行」など、無理のない範囲で言い換えるようにするのがおすすめです。

人間関係をつくるのも言葉、こわすのも言葉

微笑み合う介護スタッフと利用者さん
なぜか上から目線で接してくる人、何かと自分の都合を押し付けてくる人、おせっかいな人や馴れ馴れしい人・・・そんな人と関わるのは、誰でも嫌ですよね。

逆に、同じ目線に立ってこちらの話もよく聞いてくれる人や、礼儀正しい人なら、「この人とはうまくやっていけそう」と思うのではないでしょうか。介護サービスを受ける高齢者にとっても、それはまったく同じです。

ふだんの声かけは、礼節をわきまえ、相手の意思を尊重することを念頭に。認知症の人への声かけは、相手の世界に寄り添うことを忘れないようにしましょう。

参考文献:「認知症の人がスッと落ち着く言葉かけ」 著者:右馬埜 節子

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