認知症事故で請求される賠償金のリスクに備える保険とは

使えるハウツー

線路
2007年、名古屋で認知症の方が、線路内に立ち入りはねられるという事故が起きました。このとき家族には720万円の損害賠償が請求され、一審の判決で全額の支払いが命じられました。大きな話題になったので、よく覚えているという方も多いのではないでしょうか。

その後、「家族だけに責任を押しつけるのはおかしい」という世論の高まりもあり、2016年に支払い義務を否定する逆転判決が確定。それでも、事情によって家族が責任を問われる余地も残した判決は、大きな波紋を呼びました。

認知症でも他人に損害を負わせた場合には、賠償責任を問われることがある・・・そんなリスクに備える保険として、今「個人賠償責任保険」が注目されています。わかりやすく説明しますので、ぜひ知識として、頭の隅に入れておいてくださいね。

個人賠償責任保険とは

首をかしげる女性
日常生活のなかで、人の物を壊してしまったり、人にケガをさせてしまったりした場合に、法律によって賠償金を支払わなくてはならないことがあります。たとえばデパートで高価な壺を割ってしまった、不注意で人にぶつかりケガを負わせてしまった・・・そんなアクシデントは、誰の身にも起こりうるもの。場合によっては賠償金が高額で、とても支払える額ではないこともあります。そんなときに役立つのが「個人賠償責任保険」。

個人賠償責任保険はほとんどが、自動車保険、火災保険、傷害保険などの損害保険に、特約で加入するものです。保険料も年額1,000~2,000円程度と安価ですので、自分がすでに加入している損害保険に特約でつけられるか、ぜひ確認してみてください。

認知症の親が心配な場合の注意点

認知症の親が心配でこの保険を考える場合には、注意点が2つあります。ひとつは、補償の対象者。通常、保険の対象は被保険者とその家族全員ですので、認知症の親が同居している場合、自分が加入していれば大丈夫。しかし別居だと対象外とする商品も多いので、ここは注意が必要です。最近は、認知症の別居の親に代わって子が賠償する場合、対象に含める商品も増えてきましたので、加入前にどちらなのかを確認しておきましょう。

また、人にケガをさせたり物を壊すことも心配ですが、認知症だと線路内などに入ってしまうことで、電車遅延を引き起こすようなトラブルも考えられます。遅延についての損害賠償を求められた場合、何も壊しておらずケガもさせていないと、補償の対象外になることがあります。認知症の親のために個人賠償特約をつける場合は、電車遅延が対象になっているかも確認しておくのがおすすめです。

本人が自動車保険に個人賠償特約をつけていた場合も、車を手放せばそれに伴い保険を解約したタイミングで補償も失ってしまいます。あらたに傷害保険などに加入し、特約をつけることを忘れないようにしましょう。

地方自治体に広がる、認知症事故の補償制度

日本地図
実は今、地方自治体が認知症本人や家族に代わって個人賠償責任保険の契約を行い、事故があった場合の賠償金を補償する制度が広がりをみせています。これは、誰もが安心して暮らし続けられるまちづくりの一環としての動きで、きっかけとなったのは冒頭でお伝えした名古屋の鉄道事故。認知症の人やその家族を、高額な賠償金のリスクから守ってくれる制度です。

補償の流れ

  1. 認知症家族らが自治体に事前登録
  2. その登録情報を使い、自治体が民間保険会社と個人賠償責任保険を契約
  3. 事故が発生し、損害請求されたら、認知症家族らが保険会社に申請
  4. 被害者に保険会社から保険金の支払い

現在、39の市区町村で導入されており、なかでも事件があった愛知県内で、導入する自治体が多くなっています。最近だと、大阪府寝屋川市が今年10月に制度を導入。申請後承認を得られれば、保険料は市で負担してくれるというもの。導入当初から大きな反響があり、今も1日に数件程度のペースで申し込みがあるそうです。

今後は、住んでいる場所によって補償に格差が生じることを避けるため、自治体任せではなく、国が一律で公的支援の枠組みをつくるべきという声も出ています。以下に補償を導入した自治体の例を挙げますが、今後もさまざまな地域で導入が予想されますので、お住まいの自治体については個別に確認してみてください。

【北海道】北広島市
【青森県】三沢市、むつ市、六ケ所村
【福島県】田村市、白河市
【栃木県】小山市
【東京都】葛飾区、国分寺市
【神奈川県】大和市、海老名市、相模原市
【富山県】富山市
【長野県】下條村
【岐阜県】本巣市、高山市、北方町
【愛知県】大府市、阿久比町、みよし市、刈谷市、豊田市、知多市、高浜市、東海市、蒲郡市、岩倉市、幸田町
【三重県】いなべ市
【大阪府】泉佐野市、寝屋川市
【兵庫県】神戸市、養父市
【岡山県】総社市
【福岡県】久留米市、粕屋町
【佐賀県】吉野ケ里町、武雄市
【大分県】豊後大野市

※2019年12月現在の情報です。

リスク回避のために、自分から知って動こう

スマートフォンを持ってガッツポーズをする女性
認知症の人を支える家族にとっては、ただ毎日を無事に過ごすだけでも大変なこと。もしも、そのうえに高額な賠償責任まで背負わされてしまうとしたら・・・・。考えただけでもゾッとします。

各地方自治体で、上で紹介したような救済制度が広がっていますが、これも自分から登録しなくては利用できません。まずは本人の住む自治体がそういった制度を行っているかどうかを確認してみましょう。そして、もし制度が利用できるようなら、ぜひ登録をしておきましょう。

制度が導入されていなければ、家族が入っている損害保険について調べ、ぜひ個人賠償特約をつけておきたいもの。保険料は高くても年額2,000円程度です。万が一のことを考えれば、たいした金額ではありません。

事故が心配だからといって、家族や介護する人が24時間認知症の人を見守り続けることは、事実上不可能です。そして、いったん事故が起こってしまうと、発生する損害賠償は、自分ではどうしようもないほどの額にのぼることもあります。少し手間とコストがかかるかもしれませんが、毎日を安心して過ごすためにも、ぜひ確認しておいてくださいね。

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