ストレス?病気?唾液が出ない高齢者の傾向と対処法

使えるハウツー

からだの不調に悩む高齢女性

高齢になると、唾液が出にくくなって口の中が乾燥してしまう「ドライマウス」になる人が増えます。

その原因の一つは、加齢によって起こる唾液腺の萎縮です。しかし、高齢になると必ず唾液が出なくなるというわけではなく、他にもさまざまな要因が重なっていることが多いもの。適切な対処をすれば、解消される可能性もあります。

このコラムでは、唾液が出にくい人の傾向とその対処法をご紹介します。高齢者の中には「歳なんだからあたりまえ」とあきらめる人もいますが、実際、100歳になってもしっかりと唾液が出る人はいます。

唾液が出るとお口の中が健康になり、それが全身の健康につながります。ぜひ、唾液に関する知識を深めて、介護に役立ててください。

高齢になると、なぜ唾液が出にくくなる?

加齢によって唾液を作り出す唾液線の機能が低下し、唾液は出にくくなります。唾液の量が減ると、口の中が乾いて飲み込んだり口を動かしたりしにくくなり、さらに唾液の量が減るという悪循環に。また女性の場合は、女性ホルモンの分泌量の低下が唾液の量を減らす一因となります。

このように、高齢者の口は唾液が出にくい環境であることは確か。しかし加齢だけが唾液の分泌量の低下を招いているわけではありません。

加齢ばかりではない。唾液が出にくい人の傾向と対処法

ひとりで食事をとる高齢男性

加齢以外にも唾液が少なくなる原因があります。次に、唾液が出にくい人の傾向と適切なケアの方法をみていきましょう。

・噛む回数が少ない
口の周りの筋肉や歯が衰えて噛む力や飲み込む力が低下すると、食欲が減退し、食事の量や回数が減ったり、やわからかい食事ばかりを好んだりと、噛む回数が減ってしまいがち。唾液は、噛むことによって分泌が促されるため、噛む回数が減ると唾液の分泌量の低下につながります。
【対処法】
おしゃべりをしながら、楽しく食事できる雰囲気づくりを心がけましょう。食事前に唾液腺をやさしく刺激するマッサージやお口の体操を行うと、唾液が出て飲み込みやすくなります。
また、入れ歯が合わなくなっていないか、定期的に歯科医に相談をしましょう。入れ歯を作り直すとよく噛めるようになり、「食事がおいしくなった」と感じやすくなります。

・ストレスを感じている
「緊張して口の中がカラカラ」。そんな経験をしたことのある人は多いのではないでしょうか。これは、ストレスを感じると交感神経が働いて、ネバネバとした唾液が分泌されるため。
高齢者にとってのストレスは、体調の悪化や人間関係の悩み、痛みをともなうケアなどが考えられます。
【対処法】
リラックスできるようにこまめに声をかけましょう。話を聴いてあげるだけでも、ずいぶんと気分は晴れるものです。時には、レクリエーションで楽しく笑ってもらい、ストレス発散をすると良いでしょう。

・おしゃべりすることが少ない
唾液の分泌を促すには、口を動かすことが大切。しかし、高齢になると行動範囲が狭くなって人とおしゃべりをする機会が減るため、唾液が出にくくなります。
【対処法】
日々の介助の合間に明るく声かけをして、おしゃべりを楽しんでもらいましょう。一緒に歌を歌うのもおすすめです。

・薬の影響
何種類かの薬を服用すると、その副作用で唾液が減少してしまう可能性があります。
唾液の減少に関連する薬剤は、降圧剤や利尿剤、制吐剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤、座薬など数千種類にのぼるともいわれています。
【対処法】
口の中をうるおすジェルやスプレーなど、保湿ケアグッズで乾燥を予防しましょう。もちろん、薬を処方した医師に相談することも忘れずに。

・口呼吸になっている
口のまわりの筋肉が衰えると、口をしっかり閉じることが難しくなり、口呼吸になってしまいます。また、鼻炎などの鼻の疾患で口呼吸になることも。口呼吸になると口の中が乾いてしまうだけでなく、ウイルスや細菌が体内に入りやすくなってしまいます。
【対処法】
口のまわりの筋肉を鍛える「あいうべ体操」で口呼吸が改善されることがあります。レクの中に取り入れてみてはいかがでしょうか。鼻に疾患がある場合は、耳鼻科に相談しましょう。

・脱水症
高熱や嘔吐、下痢などにより体内の水分が失われると、人間の体は汗や尿の量を減らして体内の水分を保とうとします。それと同時に唾液の分泌も減ってしまいます。
【対処法】
高齢者は、自分でのどの渇きを感じにくいもの。周りの人が、皮膚が乾燥したりトイレの回数が減ったりしていないかチェックして、脱水症になっていないか確認しましょう。
また脱水をふせぐために、水分をとるように声をかけをしたり、水分が多い食事メニューにしたり、部屋で加湿器を使ったり、日頃から気をつけてあげることも大切です。

唾液トラブル、病気の可能性も確認しておきましょう

お腹に異変を感じている高齢男性

日常生活に原因がある場合だけでなく、病気によって唾液の量が減り、ドライマウスを発症する場合もあります。

・唾石症(だせきしょう)
唾液の通り道に、唾液中のカルシウム成分が結晶化した結石ができる症状です。結石が大きくなると唾液の流れをふせいでしまいます。

・自律神経失調症
交感神経と副交感神経のバランスが乱れる病気です。さまざまな症状が現れますが、そのひとつとして唾液の量が減ることがあります。また逆に、唾液の量が増えすぎることもあります。

・シェーグレン症候群
遺伝や免疫異常、ウイルスなどが原因で発症する病気です。唾液腺に炎症が起こって唾液の分泌量が低下し、口に強い乾きが起こることがあります。

・慢性関節リウマチ
関節が炎症を起こす病気ですが、シェーグレン症候群(前項を参照)が合併して発症することが多く、口の乾きが症状として現れることがあります。

・肝硬変
肝硬変が原因で貧血になることがあり、これが唾液の分泌量を減少させます。さらに、腹水のある患者さんに処方される利尿剤の作用によっても唾液の分泌量が減ります。

・糖尿病
高血糖になると、体内から糖を出すために尿量が増えます。そのため、体内の水分が少なくなって唾液の量も少なくなります。

・腎不全
腎不全の治療として人工透析を行うと、体内の水分が失われ、唾液の分泌量が減ることがあります。また、治療で用いられる利尿薬によっても唾液は出にくくなります。

・尿崩症(にょうほうしょう)
尿の量を調節する抗利尿ホルモンが欠乏して尿量が増え、体内の水分が少なくなって唾液の量が減ります。

・うつ病
抗うつ剤の副作用だけでなく、うつ病の症状として口の中が乾燥することがあります。

・放射線治療によるもの
がん放射線治療で、唾液分泌に関わる頭頸部の神経に放射線が照射されると、唾液線の組織が障害を受け、唾液の分泌が減少します。

・脳梗塞、脳出血
脳血管に障害をきたして口の周りの筋肉がまひし、唾液の分泌量が減ることがあります。

お口のケアで改善されない場合は医師の診察を

おせんべいも問題なく噛んで食べられる様子

唾液トラブルは、ちょっとした心くばりやケアで改善されることがあります。高齢者自身では気づかないことが多いので、周りのフォローが大切。ぜひ、日頃から唾液が出ているかどうかのチェックをしてくださいね。

ドライマウス気味だと気づいたら、素人判断せず、まずは医師の診断をあおぎましょう。安易に「歳だから」「よく噛まないから」などと決めつけてしまうのは禁物。思わぬ病気がひそんでいるかもしれません。病気の可能性がないとわかったら、適切な対処法でケアしてあげましょう。

唾液のトラブルは全身の健康と分けて考えられがちですが、唾液が出ると、口の中が清潔に保たれて虫歯や歯周病を防いだり、食事がしやすくなったりと、いいことがいっぱい。高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の向上につながり、介護をする側もされる側も、きっと笑顔が増えますよ。

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