介護のリスクマネジメント。ヒヤリハット報告書で対策を

介護の仕事


介護職としての経験を積んでいくと、後輩ができ、リーダーになり、と、キャリアアップしていくにつれて、スタッフからの質問に答える立場になります。

「リスクマネジメントって何ですか?」「えっ・・・。」

リスクマネジメントは直訳すると「危機管理」。転倒や転落、誤嚥など、ケガや命にかかわるような事故が起こらないようにあらかじめ管理して、「利用者がその人らしく、日々を楽しく過ごしてもらえる支援をする」という介護施設本来の目的を十分に果たせるようにするためのものです。

このコラムでは、ヒヤリハット報告書をもとに発生原因をしっかり特定して、介護事故の防止対策を考える方法をご紹介します。

利用者の安全を守り、あたたかな笑顔と笑い声がこぼれる場所にしていきましょう。

検討材料になるヒヤリハット報告書


施設の事故防止対策を考えるときに、手がかりになるのは「ヒヤリハット報告書」です。当事者だけでなく施設全体で集まったり、委員会メンバーで事故防止対策を具体的に決めたりしていきます。

たとえば次のようなヒヤリハットが起こったとします。

「車いすの利用者を介助して外出から戻り、玄関で車いすを止めたが、風が強かったので扉を早く閉めようとそばを離れた。ブレーキをかけていなかったので、利用者が立ち上がろうとして車いすが動き、転倒しそうになったが、たまたま玄関に来た別のスタッフが気がついて支えたため無事だった」

このとき介助していたスタッフがヒヤリハット報告書を書きます。検討に必要な項目をピックアップすると次の表のようになります。

ヒヤリハットの内容 いつ 〇月〇日(●曜日)××時××分~◆◆時◆◆分ごろ
どこで 施設の玄関
だれが 利用者△△様
なにが、なにを 車いすのブレーキ
どのようにした、しなかった ブレーキをかけずに利用者のそばを離れた。
起こったこと 利用者が立ち上がろうとして転倒しそうになった。
発生した理由 なぜ起こったか 風が強く、早く扉を閉めようと急いでしまったため。
報告者が考える防止対策 繰り返さないためにはどうしたらよいか 車椅子を停止させたら、まず「ブレーキをかけますね」と利用者に声かけすることを習慣にすると、自分でも確認できるようになるのではないか。

この情報をもとに防止対策会議を開きますが、話し合いには大切な前提があります。それはヒヤリハットの原因を、起こした個人のせいにしないこと。

個人のせいにしてしまうと、「○○さんがうっかりしたこと」が発生原因だという結論になり、「○○さんも、ほかのスタッフも、これから気をつけましょう」という防止対策しか考えつかなくなるからです。

重要なのは「いくら気をつけていても、人はミスするものだ」ということからスタートすることです。そうすると、どんな人でもヒヤリハットを起こさなくなる対策を、あらゆる方向から考えられるようになります。

発生原因を追求する方法

1.状況のイメージを共有する
まず「ヒヤリハットの内容」に記載された事実を確認します。スタッフは、自分の経験から場所や状況が頭に思い浮かぶはず。もし自分に起こったことだったら、と全員がイメージすることが大切です。

2.発生原因に「なぜ」を繰り返し、根本的な原因を追求する
次に発生原因を考えます。「風が強く、早く扉を閉めようとして急いでしまったため」という原因について、「なぜ、早く扉を閉めようと急いだのか」と問い、全員で答えを出していきます。出た答えに対しても「なぜ」と問うことを、さらに4回繰り返します。

問い続けていくと、「~だった」の内容が、主観の入る余地のない、誰にとっても納得できるものになっていきます。

最初の「なぜ」に対しては3つの答えが出ました。
(1)扉が閉まりにくかったから
(2)扉を閉めてくれるスタッフが近くにいなかったから
(3)少しの間なら利用者のそばを離れても大丈夫だと思ったから

次に(1)~(3)のそれぞれについて、「なぜ」を4回繰り返して答えを出していきます。

(1)扉が閉まりにくかった
なぜ?→ 蝶番の修理がされないままだった
なぜ?→ 閉まり具合が悪いことが報告されていなかった
なぜ?→ 誰が報告するか決まっていなかった
なぜ?→ 施設の設備の不具合を報告するルールがはっきりしていなかった

(2)扉を閉めてくれるスタッフが近くにいなかった
なぜ?→ ほかのスタッフを呼ばなかった
なぜ?→ まだ新人で、お願いしにくかった
なぜ?→ ほかのスタッフは忙しそうだった
なぜ?→ スタッフの人数が少ない時間帯だった

(3)少しの間なら利用者のそばを離れても大丈夫だと思った
なぜ?→ 扉を閉めるのに時間はかからないと思った
なぜ?→ 体を動かせる利用者だということを忘れていた
なぜ?→ いつもはじっとしてくれていた
なぜ?→ 当日は、体がかゆいといって体を動かしがちだった

ヒヤリハットの内容によっては、問い直すうちに答えが出にくくなるかもしれませんが、それでもがんばって合計5回、行います。考えることを続ければ、必ず「ものごとの本質」が見えてくるからです。

介護のリスクマネジメント。ヒヤリハット報告書で対策を、後半は

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